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第二章 調合
大城硝子の敷地は、さほど広くない。元は別の用途に使われていたコンクリート造りの小規模な本館を改装し、そこへガラス工房として必要な作業場を増設した形である。
駐車場は通りから脇道を入った先にあり、従業員も使用する。来客はタクシーを乗り付けるか、レンタカーを停めてからぐるりと建物を回り込む形で、正面玄関に入る。
正面玄関のガラス戸と大きな窓に囲まれた受付が、商品としての作品の展示スペースも担う。
樽のような丸みを帯びたタルグラス、背の低いロックグラス、背が高く口の広がったビアグラス、大きな平たい皿、小さく深い器……様々な色の透き通ったガラス製品が、真っ白なテーブルクロスを掛けた長机に並べられている。いずれもこの大城硝子で製作された物で、底の裏にはそれを証明する四角形のシールが貼られていた。自立式の小さなプレートに書かれた値段は、機械化の波に負けず、ひとつひとつが職人のこだわった手作りであるからこその設定である。
他に、とんぼ玉を使ったアクセサリーも少しだけ取り扱っている。作業場の大きな窯ではなく、隅にあるガスバーナーでカレットを溶かして作ったガラス玉に、ヘアゴムやネックレスの鎖を通した物だ。時間帯によって外から射し込む陽光にきらきらと輝いて、来客も通行人も一度は足を止めてその様に見入った。
そんな受付と作業場以外に、来客の立ち入る場所はない。
受付の奥の廊下を左に曲がれば、すぐに従業員の休憩室を兼ねる事務所がある。その奥に完成した作品の保管部屋、反対側にはトイレやシャワールームといった水周り、そして突き当たりは裏口に繋がり、狭い敷地にごみ捨て場と倉庫、小さなプレハブ小屋があるばかりだ。
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