夏だ!オタクだ!お祭りだ!

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夏だ!オタクだ!お祭りだ!

 その日、日本のイベント会場は大いに盛り上がりを見せていた。数年ぶりに、夏の大規模同人誌即売会が開催されたからである。  久しぶりの夏の戦場。本を売る者、一般参加者、主催者、関係企業。みんなが今回のイベントに大いに熱を上げていた。何が何でも盛り上げねばと、熱の入った宣伝を繰り返したのである。 『ずっと中止されていた夏の戦場が帰ってきた!』 『日本が誇る祭典、再び!』 『参加サークル数は過去最大!三日で六万サークル突破!!』 『貴方が欲しい夢と希望の本とグッズがここにある!!』  Twitter、Instagram、FacebookにYou Tube。ありとあらゆる媒体で宣伝されたイベントは、どんどん拡散され、今まで参加したことがなかった人も興味を持つようになっていた。  そして、三日間の日程のうち、初日に参加した者達がさらに喜びの声をネットにアップし始めるのである。 『超大盛況!混んでたけどマジで楽しかった!』 『待ち望んできた萌えがここに、ここに……!』 『久しぶりに同志に会えたぞおおおおおおおおおおおお!!』 『最高の夏をありがとう!』  元々参加者が多い大規模イベント。待ち望んでいた者は数知れず。それでいて、いつも以上に熱心な宣伝と反響。  普段は参加しない者たちも、翌日から次々とその最高の夏を求めるべく彼の地を訪れ始めていたのだった。例えば。 「そ、その!女性向けジャンルはどっちですか?」  アメリカからお忍びで訪れた、某ハリウッド女優。 「き、君。つかぬことを尋ねるが、これは夏川✕長谷部であってるかね!?私はリバは地雷なんだ……!」  SP引き連れてご登場、現職総理大臣。 「最強猫帝国のマンガだと?まとめてご購入ニャ!」  とある島の猫の群れ五十匹。 「ライオンクイーンのオールキャラほのぼの本はどこ?どこにあるのっ!?」  参加したいあまりに動物園を脱走してきたメスのライオン。 「ぐぐぐ、あの怪獣との馴れ初めなんて、おぬしやりおるな……!」  地球の地殻で寝ていたのを慌てて起きてきた某怪獣。 「はぁぁぁぁぁぁ!?なんで私がクトゥグアとラブラブにされなくちゃいけないんですか!私の相手って言ったらふつーにアザトース様とかでしょ!?せめてハスターあたりにしてくださいよ!!」  自分が絡むカップリングに文句つけまくりのと外なる神――などなど。  楽しいお祭りに参加したいと、人間も人間じゃないものもどんどん集結し、会場は大混乱と化していたのだった。それでも、異星人やら怪獣やらにもめげずに本を売り捌く鋼メンタルなサークルも数多く見られたが。
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