終わりの境目、打ち上げ花火の約束

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 そして戦争という全く想定外の事象によって、全てが変わってしまった事に気がついたのはしばらく後。全員避難ということは、明日から大学はやってないだろう。授業もテニサーもない。バイト先もやってないだろう。避難指示の出る地域のカラオケ店なんて営業するはずもない。  頭の中に分厚く堆積する不安や混乱は、情報源など何もないから解消されることは全く無く、気がついたら夜だった。それでも腹が減る。だから簡単に親子丼を作って、その後、重い足は自然と、街道に向かっていた。  そこに広がるのは奇妙な光景だった。  街道沿いにはところどころ店舗や住宅がある。けれども避難したのか、人の息づく明かりというものは存在しなかった。等間隔で街道沿いに置かれた街路灯だけが点々と変わらず灯っている。そして昼間見た哨戒塔の上に灯りはなかったが、人がいる気配がした。そして背後からふいに声がかかった。 「近づかないほうがいいよ。あんたも様子見に来たの?」 「……それは撃たれるから、でしょうか」 「なんだ、あんたも見たのかい?」  尾黒(おぐろ)と名乗るその男は僕より少しだけ年上に見えた。街道に一定の距離を近づけば、1,2回警告の狙撃があり、3回目には撃ち殺されるらしい。 「試した人がいるんですか」 「ああ。何人かな。夜になったら視界が効かないからさ。それで一応、そんな奴がいそうなら声をかけてるわけ」  尾黒はサバゲーが好きで暗視装置を持っているそうだ。それで敵軍とやらも暗視装置くらいは持っているのだろう、正確に3発目で即死させている、そうだ。  サバゲー、死ぬ。借りた暗視装置を覗けば哨戒塔上に銃と思しきものを構えた人間がいた。
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