山狩り

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山狩り

鬱蒼とした木々が訪れるものにも一抹の不安を覚えさせる山中。 狩人は猟犬を引き連れて山道を歩いていた。 猪が作物を食い荒らすとのふもとの百姓からの訴え。 村では腕利き。肉は百姓と囲む鍋に、皮は、領主の屋敷に飾る剥製(はくせい)にと頼りにされた。 草むらの奥から物音。 猟銃を構え、犬に追わせる。 だいぶ底もすり減ったブーツで草中に分いる。 鳴り響く銃声。 (たお)る一頭の獣。 血肉は土に。 なんのことはない。 隣村の百姓から同じ頼みで野狩りにきた同業者の誤射であった。 狩人、山に死す。 銃砲。 獣撃つ人の利器。 また獣撃つ。 自然の理、用いて作られたもの、また自然の一部。 自然の中に、斃る一頭の、 ただ斃る一頭の、 ただなる獣、ここにあり。
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