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『でもさぁ、ヒーローなんだし、命懸けて表彰されたら名誉なことじゃない?──』  僕と同じように、ニュースを見ていた若い子達の話し声が聞こえてきた。 「──アタシあのコメンテーター嫌いなんだよね」 「わかるぅ、うるさいし怖いし酷いこと言うし」 「でも今回はちょっと言ってることわかるかも」 「それな~、ブラウンだっけ?ヒーローなのに定年退職したっていう」 「そうそう、ヒーローならさぁ──」 他の話し声も耳に入った。今度は40代くらいの男性達だ。 「──最近のヒーローは軟弱や、自分の身の安全ばっか優先しよる」 「せやせや、うちらの若い頃のヒーローは、2年ポッチで殉職するのが当たり前やったのに」 「ヒーローは市民を守って死んで、ようやく一人前や──」  そう、この(まち)は、 だと思っている。 *  ニュースの音が聴こえない場所まで離れて、そこにある喫茶店に入り、ホットコーヒーを注文する。最近胃が弱って来たから、ミルクと砂糖も忘れずに頼む。  平日でも店内は賑わっていて、たくさんの話し声が聴こえて来た。 「40年前の怪人の化石が──」「ヒーローの人気投票どこに入れる?あたしは──」「ヒーローブルーくんのニューアルバムが──」「ピンクちゃんのブロマイドって──」「イエローの大食い大会の話なんだけど──」  その中でもよく僕の耳に届くのは、ヒーローブラウンの話。僕がブラウンだから、やたらと入って来るのかもしれない。 「ヒーローブラウンって定年退職したんだ?」「60代にもなって、よく今までヒーローやれたよね」「ブラウンって何かイベントとかやってたん?」「影薄かったから覚えてないや」「アイツいっつも人気投票最下位じゃん」「イエローのお腹周りは愛嬌あるけど、ブラウンのはなぁ…」「白髪で顔にシワのあるおじさんヒーローって、需要あんのかね?」
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