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起
この度、約45年間ヒーロー戦隊のヒーローブラウンを担当してきた僕ですが、
「茶道 久近さん、長いお勤め、ありがとうございました!!」
ヒーローレッドこと赤星君を始めとした若き仲間達に見送られる形で、
この度、定年退職しました。
*
「茶道さん、これからは何をしていくんですか?」
ヒーロー基地を出る直前、赤星くんに訊かれた。
「そうだなぁ…久しぶりに、釣りとかしようかな」
「釣り!いいですね!!冬のヒーロー旅行以来ですよね!」
「うん、これまで皆との旅行でしか出来てなかったから。プライベートでの釣り、本当に久しぶりだなぁ」
「日程決まったら是非呼んでください!俺も行きます!」
「ありがとう」
ヒーローレッドこと、赤星くんは熱血で明るい子だ。赤に相応しい青年だと心から思う。
*
両手をブンブン振るレッドくんや仲間達に見送られ、僕はヒーロー基地を出た。ビルや商業施設がたくさんある大通りを歩いていると、
『──本日、ヒーロー戦隊のヒーローブラウンが、定年退職しました──』
ビルに貼り付けられている巨大なテレビモニターから、ニュースが流れた。僕の話をしている。
『──ヒーロー戦隊から定年退職者が出るのは極めて異例ですが、コメンテーターの坂下さん、どう思われますか?』
『いやぁね、ヒーローっていうのは命懸けて我々市民を守る者でしょ?何で定年退職者が出ちゃうわけ?命懸けてないの?』
『…職務を全うした、と言えると思いますが』
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