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渋谷の通称駅裏カテーテルと呼ばれる公園への近道の路地裏に、その場の雰囲気とはかけ離れたメルヘンティックなドレス風の服の少女が薄暗がりの先を見確かめながら、引き寄せられるように入っていった。 室外機の生あたたかい風に転がる、汚れてくしゃっとされたアニメキャラクターのフライヤーが白いボンボンのついた丈の短いくつしたにはりついた。 少女はそのフライヤーを取りあげた 目を見開き 「ガムダム?」 次々に出てくる。 「使徒襲来!」 「私の歌を聴け ― !」 「止まらない未来を目指して-ぇーえ――」 発音に外国語訛りがあった。少年っぽい語尾だった。 渋谷なのに舗装すらされていない道にいくつか転がるガチャの空カプセルにうきうきしながら 「何という幸運、2個も中身がはいったまま、こんな場所にもトレジャーが」「まっこと、ジャポンはモノの価値がわかっておられ、られろ、?、れれろ、ろろらろ、?、?、おられ・・・、・・・わかっておられぬ」 10歳ぐらいの少女には不似合いな言葉使いを、歌舞伎の見得のようなしぐさを交えて、まだ慣れない日本語に語尾を振り回されながら、なんとか正しく言いきった。 目抜き通りのビルとビルの間のその筋状の空間には、周りの建物が古く、建築法上防犯上の問題で、中に立ち入れないように設置してあった簡易柵の、こわされた後の鉄枠残骸があちこちに散らばっていた。 近くにサブカルチャー専門の建物が出来てから、この路地での軽犯罪の発生件数は増えていた。随分以前からたちの悪い輩のたむろするようになっていた公園への近道でもあったので、地元の住民はそこを利用することはなかった。 軽犯罪の被害者の多くはサブカルチャービルの利用者たちだった。
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