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雨ざらしで変色した漫画雑誌が捨てられてあった。 「激怒!」 「お許しください、なんと不敬なることを」 その切れ長でくっきりした二重の目を閉じ、小さい声で祈りの言葉を捧げると、体を低く沈めながら右手を左の腰のあたりにもっていき、踏ん張り用に靴をにじりっと土にやや埋め、暫時静止。次の瞬間ふっと息、カッと目開き、いなや、叫ぶ。 「不届き者、成敗!」 腰から頭を軸に体をくるっと素早く回転させ、遠心力を、右手の持っているのであれば丁度刀一振り分ほど先の作用点に集中させて、一閃。 渋谷駅でもたつく前の人を押しのけて改札を通ろうとしていたその男のパスがいきなり真っ二つになった。男は警告音とともに改札に閉じこめられた。 思わずコンコースに落としたパスケースの、もう片方のウィンドウの漫画キャラクターが、ウィンクとともに、GJのサインの形にした指を遠くの路地の少女に向かって差し出す。 振袖をはためかせたように広がったプラチナの長い髪は、中空で止まると、その場に生まれた気の磁力に引かれ、重さをほぼ無くし、羽毛のごとく、彼女の白いドレスの膨らみかけた胸元にゆっくりふわりとかかった。 余韻の中すっと摺り足で半歩後ろに下がる。 「 わが名を冠する、ラクカァナ心眼惹姫丸!」 「目にものみたか、漫画を大切にせぬ悪党めが!」 彼女はそこに切られ倒れている仮想の悪党を碧玉の眼差しで見下ろした。 水玉パンツが可愛いかった。
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