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数十メートルぐらい先に公園が見える。 少女はスマホのゲーム画面を見ながらその公園を目指して入り込んでしまったのだった。 土地勘の無い者でもその危険そうな雰囲気に道に入るのはためらうのだが、少女は、子供とは思えない立ち居振る舞い、言動にも垣間見える、危なさを気にも留めぬ様相で、その薄暗い路地を進んでいく。 「ラクカァナ様 ―― 、どこにおいでですか?」 若い女性の声は数台のバイクに消されて、少女には聞こえなかった。 「マデューン様は先程公用車で帰られたばかり、番号が一つも思い出せない。私としたら、いつもドジばかりで、ラクカァナ様にもし何かあったら・・・」 頭の中には釣り竿につるされたアニメのブルーレイBOXに食いついて、黒装束の侍に連れ去られるラクカァナの姿が浮かんでいた。ラクカァナは大喜びで釣られていた。 ―― 「ラクカァナ様、そんな得体を隠した黒装束の侍ではなくて、アニメや漫画で学んだ直線告白の真っ白々王子様にどっくんどっくん心動かされて、わちゃわちゃの大志を持って、すっとことんずばっと釣られて下さい。嘆かわしい、小さき時よりお傍に仕えてまいりました、わたくし、メリ・エレノア、お暇を頂き、かねてより待っていただいております青い流星のジャン様と豹バスにて駆け落ち致します」 ―― 「ああ、連れ去られる。待ちなさい!ラクカァナ様はさび抜きしかどっこい食べられません。夜は漫画を擬音・擬態語も真剣に力をいれて呼んであげないと、お眠ができません。せめて、一番お好きなお眠漫画の題名を、後で電話でお伝えしたいので・・・、番号を、番号をはにゃあっとお教えください」 ―― 「何言ってるんだ、あなた数字3つしか覚えれないんだろ」 妄想の中で黒装束の侍が吐き捨てるように言い放つ。 ―― 「ひどい!今一番気にしていることをずばっと真っ直ぐにシャキーンと言うなんて・・・」 ―― 「そうです、私はスマホを無くして、大切な方々の電話番号を一個も覚えておりません、そんな駄目メイド、な、ん、で、す・・・。しょぼん」 エレノアは我に返って、若干の体の冷たさに身震いした。 スクール水着のその女性は、石膏像のように整った顔立ちと、揺れる大きな胸にいきかう人の視線を集めながら右往左往していた。 「ラクカァナ様、プリンセス、ラクカァナ様!」
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