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後ろから低い声が聞こえた。 「こんにちは」 若い男性警官だった。 後輩の女性警官が続けた。 「このへん怖い人も多いから、何もなかった?」 おろおろするエレノアの代わりにラクカァナは答えた。 「特に恐ろしい目にはあっておりません。もし何かありましたら、この付き人、頼りになりますので」 あわあわしているエレノアの姿を見て、冗談として受け取って、二人の警官は苦笑した。 男性警官は、にやにやエレノアの水着姿を注視して 「少し様子を見させていただきましたが、達者な日本語でいらっしゃる」 ラクカァナからの返答を待たずに、女性警官は、男性警官の職務を離れた男としての目線に嫉妬して、つい強い口調で、エレノアに言った。 「ちょっと、その恰好まずいんですよ、渋谷的に」 女性警官は、男性警官の視線をさまたげるようにエレノアの前に立った。 女性警官の頭の中では、こっそり付き合い始めたばかりの恋人の男性警官を人質にした、悪人エレノアが女性警官の銃型のピコピコハンマーで頭を連打されていた。叩かれる度エレノアの胸が激しく揺れるのに、普通程度にしか揺れない自分と比較して、余計腹が立って、思わず実弾入りの銃をホルダーから出して銃口をエレノアに向けた。頭の中で、なんと彼氏の警官は彼女に撃たれないように、悪人エレノアの後ろに隠れたのだった。 頭に血が上って体が熱くなる。 「その水着、渋谷的に禁止ですね」 感情的になっていた。 男性警官は彼女が感情にまかせて口走ってしまった、その理由に気づかずに、あれだけ教官にも直情的な面をコントロールするように指摘されてたのに、こいつなに支離滅裂なこといいだしたんだと、女性警官の肘を持って、止めようとしていた。 エレノアはそんな言葉の悪意を知らずに 「・・・禁止なんどすか?」 エレノアは覚えたての舞妓さん言葉を、すこしのその場ジャンプで胸を大きく揺らせて言った。アニメで見た、舞妓さんの着物の下駄履き歩きを真似て自分なりにやってみたかっただけだった。こんなんできますよと、ジャポンの公人に見せたかっただけだった。 その胸をよだれを垂らすかのような表情で喜んでいる、恋人の警官を見て、エレノアのふざけたような口調に対する怒りもあいまって、女性警官は嫉妬狂いの女に豹変した。 「ぶっチョロす!」 燃え上がる体の右手にもう銃を持っていた。すでにトリガーは1ミリきしんでいる。
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