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エレノアの水色の瞳が銃をとらえた。 ―― 正面、銃、女。    右、ラクカァナ、最優先。 左、男、NOT重要。 男性警官の手が銃を奪おうとする。 エレノアの舞妓のしなの完成度によしよしと満足そうにうなずいていたラクカァナの表情が凍り付いた。 息を止めるエレノア。 瞬間。 側転。 すでに、エレノアは女性警官の後ろに居た。体には一切触れず、警官の銃につけられたくさりの穴に指をいれがっしり握り固めていた。 少し離れた場所にいたはずのラクカァナは、エレノアを盾にした、その背にかくまわれていた。 ラクカァナはへたり込んでしまった。 男性警官は、二人を刺激しないように、ゆっくりと伸ばしていた手を下げた。 あちこちで何事かと立ち止まって見ていた通行人たちは、銃を見ると、その場から急いで離れ、物陰から覗き込み、スマホで撮影したり、SNSに書き込んだり、電話をかけたりしている。 エレノアは女性警官の耳元に囁いた。 「この男性はあなたの恋人ですね。お美しいあなた、争いごとは良くありません、止めましょう。大丈夫です。この方は随分あなたのことがお好きみたいですよ。いま防衛動作のついでに男性のポケットに危険物がないか確認しました。コンサートチケット2枚ありましたよ。女性歌劇団のもありました。もう2回分デートの用意してくれていますよ。ああいうのは男性の癖ですので大目にみてあげませんか、ねっ」 女性警官はその催眠的な諭す柔らかい声に、体の力が抜け、ゆっくり頷き、銃をおろした。 エレノアの足元のラクカァナは半泣きだった。 それを知ったエレノアは、お尻をふりふりして、ラクカァナをあやした。 ラクカァナは小さい時からの、泣いた後のお約束の、エレノアの慰めに、すっと気持ちを落ち着かせ、最近の二人の間の流りになっているお尻鷲掴みを実行した。 お尻を両手で掴んで離さず引きずられる少女と、ヒエーっと走り回るスクール水着の女性と、その二人のお遊びにつきあわされる銃を固められた女性警官。 頭を掻いて男性警官は天を仰いで独りごちた。 「渋谷的って、どゆこと?男にゃ訳わからん」 パトカーのサイレンが近づいてきた。
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