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●不幸な男、幸せな結婚から逃げる!●
ここは幸福の街、ミューリン。
今、この街は祝福に満ちていた。なぜなら、ここの領主の娘が結婚するからである。
元々この街は王都から離れた辺境の地で何もない貧しいところであったが、今は現領主のすぐれた統治で豊かな場所になっていた。
さらに、ここに住む住民たちは何故かよく幸運に見舞われた。
そんな噂が王都まで届いて、この辺境の土地まで引っ越してくる者が増えていった。そして、いつしか土地神の精霊に愛された幸福の街と呼ばれるようになったのだった。
昔は雑草だらけの更地だった場所がコンクリートで綺麗に整地されて様々な店が立ち並んでいる。
今日は領主の娘の結婚式の日というので商売繁盛のチャンスであり、道を歩けば店の者たちの呼び込む声が普段よりもはっきり大きく聞こえてきた。
さらに、活気が良いのは店の者たちだけでなく領主の民たちも歌って踊り今日というめでたい日を祝福していた。
空は晴天の青空、その下で大量のハトが飛び交っている。その中心地に現在挙式中である礼拝堂があった。
礼拝堂の中を覗けば既に新郎が祭壇の前に立っている。
新郎は緊張しているのか微動だにせずにお相手の新婦を待っていた。
それから程なくして、領主に先導されて歩いてくる新婦の姿が現れた。
純白のヴァージンロードを歩く様は貴族の娘に相応しく可憐で、前に進むごとに白き花が咲き誇っているかのような美しさがあった。
領主の手から新郎に託されたときの新婦の顔はベール越しでも頬が赤く染まっているのが見て分かった。
相手は人生で一番の幸せを感じているようだ。
風も祝福しているようで、優しくなびく新婦の長いブロンドは新郎の目には女神のように見えた。
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