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それからレズアンと目が合うと、彼女は真剣な眼でこちらを見据えており、そこには恨みなどの感情はないようだった。
「ゴンザレス様、もしかして先程までスサマ様と一緒にいましたか?」
「ええ、まぁ…」
あまりにも彼女が真剣なのでゴンザレスは誤魔化すことができなかった。
そして、レズアンは再び頭を下げた。
「どうか、私にスサマ様の居場所を教えて下さい!」
そういわれて、ゴンザレスは困った。
感情的には男女の問題は当事者同士が一度話し合って解決すべきだと思うが、スサマがいうように結婚することによってミューリンが不幸の街になってしまう可能性を否定できない。そんなリスクを考えるとこのままふたりが会わない方が賢明なのかもしれなかった。
また、レズアンにスサマのタレントのことを説明するのもあまり気乗りがしない。人が秘密にしたがっていることを他人がペラペラと喋るべきではないだろう。
ゴンザレスがすぐに返答をできずにいるとレズアンが一歩前に踏み出てきた。
「もちろん!それ相当の褒美を用意いたします」
「姫様の切なる願い、私が叶えてみせましょう!」
褒美という言葉を聞くと、ゴンザレスはあっさりと友を売る決意をした。
(やはり、一度本人たちは会うべきだ。…そういうことにしておこう)
「では、私は一度屋敷に戻って身支度をしてまいります。少しお待ちになってください」
レズアンがそんなことを言うもんだから、近衛兵たちは驚きで心臓が飛び出そうになった。
「姫様!まさか、御自分でスサマ殿を探すおつもりですか!?」
「もちろん!」
「いやいや、そこはもちろんではなくて…」
近衛兵の反対を最後まで聞かずにレズアンは走り出して屋敷へと向かってしまった。
慌ててレズアンを追う近衛兵たちを見てゴンザレスは苦笑いをする。
(こりゃ、本気でスサマを探し出す気だ)
何故、レズアンがそこまで必死になれるのかは知らないが、もしふたりが結ばれた場合、スサマは確実に尻に敷かれるだろうなとゴンザレスは思った。
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