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「おい!ちょっと待てよ。スサマ」
ここはミューリンの外の平原にある綺麗に舗装された道である。
スサマが街から出て遠くへ逃げようとしたときにゴンザレスという冒険者仲間に捕まってしまった。
挙式が始まる前、ゴンザレスは新郎の友人として結婚式に招待されていた。しかし、冒険者特有のがたいのよい体ゆえに、若い頃に仕立てた礼服がピチピチだった。だけど、新しく服を新調するのは面倒だし、王族も参加するという壮大な結婚式に参加するのも気が引けて礼拝堂の外にいることを選んだのだった。
彼はもともと堅苦しい行事が苦手なので店のテラス席で気楽にビールを飲みながらの方が性に合っていた。
そうしてささやかに友人の結婚を祝っていたら、タキシードを着たスサマ本人が全速力で走っているところを目撃したのであった。
「一体、どうしたってんだ?」
そして、ゴンザレスは領主の娘と結婚するという幸運をわざわざ捨てるようなバカがどこにいると叱った。
すると、スサマは充血した目を見開いて逆ギレをしてきたのである。
「バッカ野郎!お前なら俺の呪われたタレントを知っているだろ」
この世界に生まれてくる人間にはたまに特別な力を身につけていることがある。それをこの世界では持って生まれた力、『タレント』と呼ぶ。
例えば、それは一生転ばなくなるというような地味なタレントから、未来視といった王族のみにあらわれる特別なタレントなど様々なものが存在した。
タレントとは基本的にはその人間のプラスとなる力が手に入るのだがスサマの場合は違った。
スサマのタレントは『不幸な事が自分に降り注ぐ力』であった。
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