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「この呪われたタレントのせいで俺は何度死にかけたことか」
スサマは泣きながらそのように訴えた。
そういえば、スサマは街中でも泣きながら走っていた。ゴンザレスが言うまでもなく本人もレズアンとの結婚を破棄したことを多少は悔んでいるのだろう。
ゴンザレスはため息をついた。
「そもそも、厄介なタレントをどうにかしようとして、幸福の街と謳われているミューリンに里帰りしてきたのだろう?そしたら、普段不幸なお前にツキが回りに回って、領主の娘さんと結ばれたんじゃねぇのか」
「いーや、俺のタレントの力を舐めんじゃねぇ。第一、なんで二十も年上の男が領主の娘に惚れられるんだよ。そりゃ、最初は好意を寄せてきたことに対して嬉しかったさ。だけど、急に結婚の話を持ち出してきて、あれよあれよと言う間に今日の挙式まで一気に繋がったんだぞ。正直、おじさんの身としたら一連の流れについていけずに只々怖かったもん。でも、拒否する理由も権利も俺にはなかったし」
「…惚れられる理由ならあったじゃないか。俺たちがミューリンに着いて次の日にドラゴンが山から降りて来て、それをお前が倒した。その功績で『ドラゴンスレイヤー』という大層な称号なんかを領主から貰って、そこから領主の娘さん結婚話に繋がったんだろ?」
今、ゴンザレスがサラッと言ったのだが、ドラゴンが山を降りてくることは街の壊滅を意味する。それをスサマが退治したというのは偉業なことであった。
故に、一介の冒険者が領主の娘と結婚するという話が出たときに、ドラゴンを倒して街の英雄となった彼を疑う領民はひとりもいなかったのだった。
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