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「だから、素直に自分の力を認めろや」
実際の話、スサマの実力は王都騎士団の団長にも引けを取らないとゴンザレスは考えている。その強さは同じ冒険者として羨ましいものだった。
しかし、それを聞いたスサマは胸を張ることなく冷ややかな目をして皮肉な笑みを見せてきた。
「俺が強いって?そりゃそうさ。生まれてこのかた続く不幸な力のせいで、よく大災害にあったり強力な魔物とエンカウントしたりと強くならなきゃ生きることすらできない身だったからな。そういえば、以前に俺のタレントを利用して強い魔物を俺に仕向けてお前はひとりで逃げたよな!」
「…いつの話をしてんだよ」
身に覚えがありすぎてゴンザレスはそっぽを向く。
「あっ、こらっ!…まぁいい。今はここで無駄話をしている場合じゃない。俺は移動するぞ」
スサマが前に振り向くと背中には大きな荷物を背負って腰には武器を装備していた。
スサマはどんなところに行っても、すぐにその場から離れることができるよう事前に荷物をまとめていた。
どうやら、自分のせいでそこに住む人々に不幸が見舞われるのは絶対に避けたいみたいであった。
今回もきっとドラゴンがミューリンに来たことは自分のせいだと思っているし、自分が領主の娘と結婚したらたちまち不幸な街に変わると真剣に考えているのだろう。
彼のタレント能力の件があるからそれら全てを否定することは難しいが、何でもかんでも自分のせいにする加害妄想のような思考は止めろと何度も言っているのだが、本人の耳は通っても心までは響いていない。
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