10人が本棚に入れています
本棚に追加
ー きっと、ボーイは外の世界を夢見て、自由になりたくてお家から脱走したんでしょうね。でも、産まれてからずっと人と暮らしてきた猫が外で生きていくのはムリよ……。
ー それは……やってみないと。
ー あらあら、ほんとうはそんなこと思ってもいないのに。今のあなたは、外の世界を垣間見て怯えている。これからどうすればいいのかって。
ー …………。
どうしてレディは僕の気持が分かるの?
茶トラ猫とレディの言い分と心配してくれる気持ちも分かる。
そして縄張りを守ろうとする、敵意に満ちた猫の行動も理解出来る。
そして、おちおち歩けないような危険な道路。
自由にはなりたい。冒険もしてみたい。
でもそれは……、一人で生きていけることが出来るという前提があってのもの。
今の僕は、とてもとても一人で生きていける自信なんてない……。
ー ねえ、ボーイ。ご飯も出てくるし快適な室温の中で、雨風をしのげる家で暮らせるって、とても幸せなことなのよ。
ー うん……。僕、ご飯をどうやって調達すればいいのかも分からない……。
ー そうね、実を言うと私も分からないわ。私も産まれてから、今の飼い主とずっと一緒に暮らしてきたわ。確かに自由はないけれど、それに代わる有り余るほどの愛情をもらっているの。それが幸せなんだなって思うようになったわ。ボーイもお家で、とても大切にされているでしょう?
ー うん。だめだめって言われるけど、大切にしてくれるよ。
ー なら、お家に帰りなさい。このままだと、私の飼い主があなたを飼う気まんまんだから。もう二度と、今の飼い主に会えなくなるわよ。
ー えっ!? レディの家に連れて行かれちゃうの。
レディはとても優しい。飼い主もきっと優しい良い人だろう。
でも、でも僕は……。
ぽやんとしたお姉ちゃんに、脇の甘い天然のママとしっかり者のパパと一緒に暮らしたい……。
最初のコメントを投稿しよう!