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そのときだった。
「ボーイ!!」
お姉ちゃんとママの声が聞こえた。
レディと飼い主の女性、そして僕が声のしたほうに目を向けると、涙をいっぱいに浮かべたお姉ちゃんがこっちに向かって走り寄って来ていた。
「あらあら、この仔猫ちゃんの飼い主さんね。良かったわね、仔猫ちゃん。お家に帰れるわよ」
ー じゃあね、ボーイ。この辺りは私の散歩コースだから、お家の窓から私を見かけたら声掛けてね。必ず気が付くから。
ー うん。レディ、ほんとうにありがとう。僕、お家に帰るね……。
レディと女性はとても優し気な瞳で僕を見つめてくれた。
僕は感謝の意味を込めて、にゃんと可愛く鳴いた。
そして僕は女性の腕からお姉ちゃんの胸の中へと抱かれた。
最後に僕とお姉ちゃんとママは、女性とレディに深々と頭を下げ、その場で別れた。でも、茶トラ猫とレディにはまた会えそうな気がした。
お家の窓からだけど……。
お家に帰った僕は、いーっぱい叱られた。
首輪も付けられることになった。
そしていーっぱい抱きしめられた。
確かに自由はないけれど、あんなに怖い思いをするのはもうご免だ。
お家で暮らすのがいちばん安全で安心なのだと感じられた。
ほんの数時間の冒険だったけど、学ぶことがたくさんあった。
茶トラ猫とレディにも言われたけど、僕はまだまだKidだ。
早くBoyになれるよう、お姉ちゃんとママ、パパの言うことをよく聞いて、ステキな大人の猫になるんだと心に誓ったのだった。
翌朝、あろうことかパパが僕に変なあだ名を付けていた。
「よぉ!! おはよう、脱走ボーイ!!」
!?!?!? ……ちょっとした過ちを蒸し返しやがって。
ゆるさないにゃん!!
了
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