僕と僕

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
鏡、それはとてつもないほど簡単なものだが、とてつもないほど便利なものだ。 僕はそれを実感することになるなんて思っても見なかった。 僕は友達がいない。 だから鏡の中の僕に話しかけるのが僕の趣味だ。 ある日鏡の中の僕が囁いてきた。 「鏡の世界は楽しいよ。こっちへおいで」 そのまま鏡に手を入れると向こう側に行けるようだ。僕は僕に手を引かれ向こうの世界へ入った。 僕が二人になる。 その時、僕は友達が増えたのである。 僕は僕と手をつなぎ、死ぬまで鏡の中で暮らした。 完
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!