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鏡、それはとてつもないほど簡単なものだが、とてつもないほど便利なものだ。
僕はそれを実感することになるなんて思っても見なかった。
僕は友達がいない。
だから鏡の中の僕に話しかけるのが僕の趣味だ。
ある日鏡の中の僕が囁いてきた。
「鏡の世界は楽しいよ。こっちへおいで」
そのまま鏡に手を入れると向こう側に行けるようだ。僕は僕に手を引かれ向こうの世界へ入った。
僕が二人になる。
その時、僕は友達が増えたのである。
僕は僕と手をつなぎ、死ぬまで鏡の中で暮らした。
完
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