杏奈

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運転席のあんが声を掛ける。 どうやら、ずっと黙っている俺を不思議に思ったらしい。 俺はあんの頭を自分の方に寄せると、その真紅の唇にキスをした。 「何でもねーよ。部屋まで案内してくれ」 「解ったわ」 チークのせいか頬を紅潮させた、あんは安心したのか、車を発進させる。 俺は車から見える景色を眺めながら、本当の恋愛って何なんだろうなと思っていた。 少なくとも俺はまだしていない。 「着いたわよ」 割と大きなマンションの駐車場であんが、そう言って車を停める。 俺はシートベルトを外すと、腕を伸ばし、後部座席からカバンを取った。 「結構、良い所に住んでんじゃねーか」 「褒めても何も出ないわよ」 俺は思った事を言ったまでだが、あんは、そう軽く流すと歩き出す。 俺はカバンを担いで後に続いた。 あんも結構、慣れてるな。 でも、それを言うなら俺もかもしれねー。 エレベーターに乗って、どんどん上まで上がっていく。 あんが押したボタンは8だ。 8階か…夜景が綺麗だろうな。 そう思っていると、あんが俺がカバンを担いでない方の腕に自分の手を入れて腕を組む。 俺は別に不快じゃねーから、好きな様にさせていた。 と、8階に着いたところで俺は、あんに引かれる形で部屋に向かう。
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