思い掛けず

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「その必要は、ねーな」 「ああ?」「えっ…?」 気絶したのか倒れたままのサラリーマンに、眉を片方、吊り上げるチンピラ。 女も驚いたように立ち尽くしている。 「あんたじゃ俺の相手にも、ならねーって事さ」 「んだとぉ?!」 怒りに染まったチンピラの顔色。 俺は構わずチンピラ目掛けて駆けながら、カバンを顔目掛けて投げつけた。 「うお?!」 カバンを両手で受け止め、隙が出来た身体に俺は拳を振りかざした。 目指すは、鳩尾だ。 「オラァッ!」 「ぐふっ!?」 見事にヒットしたパンチに、チンピラは俺のカバンを落とし、倒れ込んだ。 その身体を蹴り飛ばすと、チンピラは仰向けになった。 「チ…クショー…覚えてやがれ…!」 チンピラはフラフラしながら起き上がると、大通りの方へヨタヨタと歩いて行った。 俺はカバンを拾うと、チンピラの後ろ姿を見送った。 「ありがとう!貴方、まだ若いのに強いのね!」 女が俺の直ぐ近くに来て礼を言った。 「礼は、いい。それよりも、あんたの連れ、病院に運ばなくて良いのか?」 女はハッとする。 「いけない!そうだったわ!…吉田くん、大丈夫?!」 女がサラリーマンの元に駆け寄る。 しっかし、この2人…土曜日だってのに、休日出勤か? ご苦労なこった。
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