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だが、こうなっちまったら、仕事どころじゃねーだろ。
「会社にも連絡しなきゃ」
そう言いながら、女はバッグから携帯を取り出した。
てえか、携帯持ってんなら、自分で警察呼べよ。
そう思いながら、その場を去ろうと歩き出した時だ。
後ろから女に声を掛けられた。
「待って!お礼位させて」
「だから、いーって」
「その制服、心誠学園のでしょう?名前だけでも教えて」
やれやれ。
俺は振り返ると言った。
「千夜保だ。早く救急車、呼んでやれ。あんたの連れが気の毒だ」
「千夜保くんね?ありがと。私は杏奈よ。小林杏奈」
女は、聞いてもいないのに名乗ると電話を掛けた。
救急車を呼んで、会社にも連絡するんだろ。
俺は何事も無かったかの様に歩き出す。
美人は大好物だが吉田って彼氏が居んじゃな。
只の同僚かもしれねーが。
だが、この出会いが俺にとって後々とんでもないことになるとは、この時、思ってもいなかった。
しばらく女を物色してると後ろから聞き覚えの有る声に呼ばれた。
「保ー!」
俺は誰だか解ったから無視して、とっとと歩いていると。
「千夜くん!」
もう1人よく知ってる声に呼び止められる。
俺は立ち止まって振り返った。
友人の鈴木航と山村凌が何やら荷物を持って歩いて来る。
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