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審判の刻
田中…。
おさねー頃から思っていたが、何て良い奴なんだ。
親父には謹慎がとけたら今夜にでも話を切り出さねーとな…。
こういう事は早い方がいいだろ。
「サンキュー…田中。借りが出来てばかりだな」
「当然の事です。あっしは坊ちゃんが産まれた時から坊ちゃんを見てきやした。妻を亡くしてからは実の子のように思ってやす…」
確か俺のお袋と田中の妻は、俺がまだ赤ん坊の頃、当時、玉名組という極道の組織の組長に殺されたという話だ。
田中が何故、こうまで俺に協力してくれるのか。
何となくだが、解った様な気がした。
夕方。
親父を迎えに田中が車に乗って千夜組を留守にしてる時だった。
屋敷の固定電話が鳴った。
来たか…。
俺は祈るような思いで電話に出た。
「もしもし」
『その声は千夜か?』
電話の向こうの声は案の定、担任の教師だった。
「ああ」
『そうか…職員会議の結果が決まった』
やっぱな…。
俺は黙って続きを促した。
『千夜。キミの謹慎が解除された』
俺は緊張の糸が切れて、長く息を吐き出した。
『只、次に又、女性関係で揉めたら、今度は停学処分にさせてもらう』
「解った…」
『明日から普通に通学するのを許可する。手紙については訴える事も出来るが、どうする?』
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