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教師の言葉に俺は即答が出来なかった。
杏奈は警察や会社に訴えられるのを覚悟して俺の前から去って行った。
今朝の様子を見て、もうこれ以上何もしなくても良いんじゃねーかって気もしてくる。
「…」
『千夜?何なら先生が警察に出向いても良い』
「谷崎先生、俺の家は出来れば警察沙汰には関わりたくねー」
極道の息子だと、こういうとき不便だよな。
『大丈夫だよ…と言ってあげたいが、こればかりは難しいな』
教師は困った様な声になる。
杏奈は気付いてねーが、俺は杏奈の会社の住所も知らねー。
…いや、待てよ。
会社の場所は知らねーが、杏奈のマンションの場所なら知ってる。
鈴木なら場所から住所を引き出せるかも、しれねー。
そしたら、ホントに杏奈の会社に写メと手紙を持って行く事はできる。
只…今朝の杏奈の涙に嘘は無いと思いてー。
「谷崎先生。手紙は明日、返してくれ」
『千夜?』
「手紙は2通共とっておきたい」
『わかった。明日の放課後でも良いかな?教室じゃあ他の生徒の目もあるから生徒指導室で返すよ』
「ああ。それで構わねー。じゃあ」
俺は、そう言うと電話を切った。
夜。
俺と田中は、親父の部屋に居た。
無論、パティシエの話をする為だ。
「パティシエだと?」
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