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結局、バイトは俺の身なりを色々直さないと採用されない、と香澄から聞いた。
服装はきちんと着ていきゃ良いだけで問題は俺の金髪だった。
黒髪のヴィッグでも買うか…。
本場のフランスへ渡る手段も有るな。
夏休みを控えた俺は、いつしかパティシエの夢が膨らんでいた。
鈴木にも明日から学園に通えるという内容を知らせる事と、杏奈のマンションの場所から住所を割り出せないか連絡を取ってみた。
数回のコール音の後に鈴木が電話に出る。
『もしもし』『もしもしー!』
しまった。
山村と通話中だったのか。
山村の声に耳をつんずかれちまった。
俺が電話をかけてきたから、鈴木の奴、グループ通話にしたんだろ。
iPonは、その点、便利だよな。
『千夜くん、吉報ですね?』
「…どうして解った?」
『現状維持や悪い知らせですと、連絡してこないのでは、と思いまして。千夜くんの謹慎はいつまでですか?』
『僕、鈴木くんから聞いて、ビックリしちゃったよー』
「山村、割り込むな。鈴木、今日までだ」
『それは又、先生方も随分早く決めましたね。学園側の裁量が良いんでしょう。もしくは何か有ったんですか?』
『割り込んできたのは保じゃないかあ!』
「…香澄がビビりそうな事だから、香澄には言うなよ」
山村の事はシカトした。
『ゆるさないと書かれた手紙ですか…。それは確かに怖いものが有りますね』
『僕だったら泣いちゃうかもしれない…。保ってこういう時、いつも冷めてるよね』
「俺だって心中、穏やかじゃなかった。只、種を撒いたのは俺自身だからな。これからは、もう火遊びは、止めだ、止め」
『そうしてください。大体、千夜くんは女性を好きでもないのに、体の関係を許し過ぎです。普通童貞を棄てるのは、1番、心から好きな女性に捧げるべきですよ。諸橋さんみたいな』
『モロハシさんって保が初めて好きになった女の子なんでしょ?僕も会ってみたいなぁ』
「山村、少し黙ってろ。鈴木、香澄の事は大切にしてーんだ。体の関係以前に心の関係を守っていきてーと言うか」
『保ー!僕も仲間に入れてよう』
『千夜くん、さっきから山村先輩を仲間外れにしてますが、山村先輩と諸橋さんを会わせるのに抵抗が有るんですか?』
「いや、別に。香澄が山村を好きになる訳はねーし」
『そんなの解らないじゃないかぁ!良いよ、カスミちゃん?は、僕が攫っていくから』
「好きにしろ。それから鈴木に1つ訊きてー事が有る。…」
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