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エピローグ
そう言うと田中は、俺の部屋を出ていった。
俺は便箋を開いてみる。
そこには意外にも几帳面な字で、こう綴られていた。
『保へ。
この手紙を保が読んでいる頃には、私は実家の在る田舎に帰っている事でしょう。
私は、あれから直ぐにマンションの部屋を引き払い、会社にも辞表を出しました。
父親に、以前から帰省して結婚するように言われていたのも有ってね。
保が、(惜しい事をしたな)って思えるくらい良い女になって、保よりずっと良い男を捕まえて幸せになってみせるわ。
保も、名前何て言ったかしら…あの可愛いお嬢さんとお幸せに、ね。
私みたいな、こんなに良い女を振ったんですもの。
彼女を泣かせたり、幸せにならなかったら、ゆるさないからね!
小林杏奈』
杏奈…。
任せろ。
香澄を泣かすような真似は、もうしねーよ。
俺は心の中で杏奈にそう告げた。
こうして女遊びを俺は卒業した。
杏奈という脅威だった女が遠く離れた地で笑っている事を願うばかりだ。
そして、俺は香澄一筋で守っていこうと思った。
『杏奈さんも、前向きにやり直す気になってくれて良かったわ』
夜の自室で香澄と通話してる時に、杏奈の事を話すと携帯の向こうで安心したような声が耳に…心に残った。
杏奈の手紙と共に。
完
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