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眼鏡をかけていない倫太郎は、いつもよりふにゃんとした笑顔をこちらに向けてくる。
「中学生相手に何言ってんだか。倫太郎捕まるよ」
「はは、たしかに。たった五つしか違わないのにな」
五つしか。わたしはずっと五つも違うと思っていたのに、倫太郎はそう思ってくれていたんだとわかったら、胸の中にずっとあった霧が晴れたような気持ちだった。
「倫太郎、わたしも学校で告白されたよ」
「紬かわいいもん。モテるに決まってるよ。ちゃんと断った?」
「んー」
なんだか倫太郎に意地悪したくなって、はっきりしない返事をわざとしてみる。倫太郎はわたしの肩を掴んで「え、断ったよね?」と心配そうに訊いてくる。
「好きな人がいるからって言っても、なかなか諦めてくれないんだよね。だからさ、これからは彼氏いるって言ってもいい?」
「いいよ」
「それはさ、断るための口実としてなの? それとも倫太郎はわたしの彼氏だと思っていいの?」
「あー、そっか。ごめん」
そう言って倫太郎はわたしの手を放すと後ろを向いてしまう。ごめんってなんだ? 調子に乗って挑発しすぎただろうかと後悔が押し寄せる。
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