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薬指に光る指輪を見つめて、宝物がまたひとつ増えたなあと笑みをこぼす。倫太郎が中学生のときの第二ボタンに、告白されたときにもらった桜で作った押し花、そして、桜のように淡いピンクダイヤが嵌め込まれた婚約指輪。大学を卒業した年の誕生日にプロポーズされた。世間一般からしたら随分早いんだろうけど、わたしにとってはやっとこの日が来たという気持ちだ。
「紬、何考えてるの?」
「ん-? 幸せだなあって」
「ふうん。たぶんおれのほうが幸せだよ」
「別にそこ張り合わなくていいから」
くだらないことを言い合うこの一瞬でさえ、幸せな宝物だ。でも、これからはきっと楽しいことばかりじゃない。辛いこともあるだろう。でも、倫太郎となら乗り越えられる。そう信じている。
「倫太郎。わたしをお嫁さんにしてくれてありがとう」
「こちらこそ、お嫁さんになってくれてありがとう」
ふたりの歳の差はいつまでも縮まることはない。けれど、別に悲観することではない。これからの長い人生、たったの五年の差は些末なものになるだろうから。
「倫太郎、長生きしてね」
永遠に終わらない追いかけっこ。これからはふたり手を取り合い歩いていく。
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