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 やっと初めて会ったときの倫太郎の年齢に追いついた。号泣したあの日から、わたしは倫太郎と少しずつ距離を置くようにしていた。近くにいればいるほど、自分がいかに子どもであるかを自覚して悲しくなるからだ。いつか倫太郎に彼女ができたときに、必要以上に傷つかないようにしたかったのかもしれない。  でも、心配していたわりに、倫太郎はモテなかった。サッカー部とかに入っていたら違ったのかもしれないけれど、吹奏楽部の倫太郎には浮いた話はなかったみたい。それに、中学三年生からかけ始めた眼鏡。倫太郎の綺麗な顔をうまく隠してくれている。  学校では、クラスの誰それがかっこいいとか、そういう話を女の子同士でするようになった。そんな中で五つも年上の倫太郎にずっと想いを寄せているなんて言えるわけなくて、わたしはみんなの話をただ聞いているだけだった。クラスの男の子なんて、子どもっぽくて全然かっこよく見えないのに。変なの。そう思いながら、たぶん変なのはわたしなんだろうなって思ったから何も言わなかった。  高校の制服を着るようになった倫太郎は、一段とかっこよく見えた。ブレザーは学ランとまた違って魅力的なのだ。背がさらに伸びて、声変わりもして、全然違う人になったみたい。でも、笑いかけてくれるその優しい表情は変わらない。大好きな倫太郎のままだった。  わたしは早くランドセルも黄色い安全帽も卒業したかった。いつまでも子どものままの姿を見られたくなくて、大好きな倫太郎の笑顔の前から逃げてばかりいた。
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