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 憧れていた制服も、自分が着てみたらあまりいいものとは思えなかった。野暮ったい膝丈のスカートに、中途半端な長さの白いソックス。それに、わたしの髪は天然パーマで、結んでもぼわっと広がってしまう。あのとき見たお姉さんみたいになりたくて、一生懸命伸ばしたけど、髪質の違いはどうしようもない。クラスの友達にストレートパーマをかけたらいいと勧められたけど、お母さんに相談したら即却下されてしまった。お金もかかるし、そのままでもかわいいからって言ってくれたけど、わたしの憧れの姿とはかけ離れていて全然好きになれない。 「あ、(つむぎ)じゃん」  部活で遅くなった帰り道、まだ慣れない声変わり後の倫太郎に声をかけられた。制服姿は初めて見せるというのに、わたしだとわかってくれたことが嬉しくてつい振り返った。 「中学はどう? 慣れた?」 「まあまあ。小学校からの友達ばっかりだし、あんまり変わった気がしないかな」 「あー、たしかにそうかも。それはそうと、紬。制服、似合ってる。それに、髪も伸びたね。随分とお姉さんになっちゃって」  そう言いながら倫太郎はわたしの髪に手を伸ばした。長い指がくるくると毛先をもてあそぶ。 「ただ制服着ただけじゃん。髪もさ、お母さんにストパーかけたいって言ったのにダメって言われちゃって。このくるくるパーマ、子どもっぽくてきらい」 「おれは好きだよ、紬の髪。ふわふわでかわいい。ずっと触っていたいくらい」
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