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 さらっと好きとかかわいいとか言ってくれちゃって。頬が緩んで仕方がない。暗くなっててよかった。見られたら恥ずかしいもん。 「倫太郎こそ、いつの間に『おれ』とか言うようになったの? かっこつけちゃってやらしー」 「しょうがないじゃん、周りみんなそうだし、うつったっていうか」 「ふうん。そんなかっこつけちゃった倫太郎はさ、彼女できた?」  なんでもない風を装ったけど、心臓が爆発しそうだ。もし、いるって言われたら、正気でいられるだろうか。倫太郎の顔を見られないまま、並んで歩く。 「できないよ。だって約束したじゃん。紬がお嫁さんになってくれるんでしょ」 「そんな昔の約束覚えてるの? やだ、倫太郎ちょっときもちわるい」  本当は嬉しくて堪らないのに、かわいくない反応をしてしまう自分がいやだ。 「え、ひど。おれ結構モテるんだよ。今までも告白されたって全部断ってきたのに」 「そう……なんだ」 「そうなの。そうだ、これ死守した第二ボタン。紬が持っててよ。紬も告白されても断ってよね」  倫太郎はちょっと不機嫌そうにわたしの右手にボタンを握らせた。ちょうど家の前に着いて、そのまま倫太郎とは別れた。これって告白なのかな。でも、付き合うとか言われたわけじゃない。よくわからない。よくわからないけど、嬉しい。手のひらの中のボタンをぎゅうっと握りしめた。
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