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◇◇◇  それっきり、倫太郎とは会えないまま季節が通り過ぎた。倫太郎は遅くまで予備校で勉強しているらしく、平日に偶然会うことはなかったし、休みの日に押しかけるのも悪い気がしたから。  秋を過ぎた頃、学校では告白ラッシュみたいなのがあった。クラス内や部活内でカップルがたくさん誕生した。わたしも何人かに告白されたけど、全部断った。別に、倫太郎の言いつけを守ったわけじゃない。倫太郎以外を好きになるなんて、ありえないだけだ。  周りの子たちがデートだなんだって浮かれてるのを見て、羨ましくないといえば嘘になる。わたしだって、倫太郎と手を繋いで歩いたりしたい。でも、ボタン(これ)があるから、きっと倫太郎と想いは通じ合っている。そう信じてずっと我慢してきた。  倫太郎と出会ってから、七回目の桜が咲いた。そろそろ倫太郎の入試の結果も発表になるはずだ。倫太郎ママとお母さんがそう話しているのを聞いた。川沿いの桜並木を歩きながら、倫太郎にも桜が咲くことを祈る。 「あ」  道の向こう側から倫太郎が歩いてくるのが見えた。手を振ろうと胸の前まで上げた右手をきゅっと握り、川のほうを向いて身を潜める。倫太郎の隣には、女の子がいた。彼女作らないって言ってたのに。裏切られた気がして、心が泣いているみたいに痛かった。
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