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「ありがとう。でも、ごめん。おれにはさ、将来を誓った相手がいるんだよね」 「え、なにそれ。親が決めたとかそういうこと?」 「違うよ。そんなんじゃない。ここでおれたちの会話を盗み聞きしちゃうようなしょうがない子なんだけどさ、すっごく大切なんだ」  その言葉に振り返ると倫太郎がすぐそばにいて、目が合うとわたしの手を取った。 「この子が? 冗談でしょ。随分と幼い子じゃない。もっとマシな断り方してほしかったな」  今日は制服じゃなかったけれど、もう大学生になる彼女からしたらわたしなんかクソガキなんだろう。刃物みたいに冷たく鋭い視線を向けられて萎縮する。でも、倫太郎はわたしを選んでくれた。その事実だけがわたしを強くする。 「嘘でも冗談でもない。倫太郎はわたしと結婚する予定だから、残念だけどお姉さんは諦めてください」  気がつけば一歩踏み出してそう言っていた。お姉さんは目をキッと吊り上げて、右手を大きく振り上げた。ぶたれる。そう思って目をとじた。
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