それなら踊って

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 わたしの居場所はいつもセンターだ。  綺麗に細く伸ばした指先がスポットライトでちりちりと痺れる。履き慣らしたトゥシューズの微かな音が音楽にぴったり重なって床で鳴った。ふわりと花のように開いたチュチュがわたしの背中を押してくれるように、ターンが進む。  発表会でもらったソロのバリエーション。振り付けも先生に考えてもらったわたしだけのもの。  踊ってる間は何も考えなくていいからすごく楽しい。音に合わせてステップを踏めば、身体の中が自然と整っていく感じがする。学校での嫌なこと、お母さんと喧嘩したこと、そんなことは全部忘れて踊りに没頭できるから。  だからわたしはバレエが大好き。  わたしだけのためのスポットライトも、拍手をくれるお客さんも、みんなみんな大好き。  ほら、最後のターン、綺麗に決めてポーズを――
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