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「極楽浄土か?}と欽次は考えた。そういうものはあるのかな、と彼は考えたが薄気味悪い連中の考えることだと思うと、そんなことにかかわるのは嫌だった。
まさか彼は浦田屋の財産をそんな坊さんにやるようなことはしたくなかったのであった。
宗教はそんなによいものなのか?
彼にはわからなかったのだ。何、あまり考えこむ必要はないだろう、と彼は考えていた。
彼は女房をなくして悲しむことはあったが、気分はいいことはなかった訳ではない。
「こんな時はそば屋のあいつに話そう」とそば屋に行く欽次だった。
店に着くなり「よお」と声をかけた。「何だ欽次か」そば屋の連中とは仲はよかった。
「かけそば」欽次は頼んだ。すぐに彼の前にそばを出したのだ。
「ありがとう」欽次は食べはじめた。「何か相談かい」と店の主人は言った。
「まあそうだったが顔を見たら忘れた」欽次は言った。「何だそんなことか」とそば屋は少し笑って離れて行った。「どんなことならよかったのかい」と欽次は笑った。「何どんなことでもいいよ」店の中でそば屋は言った。
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