漬物屋の女房

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 普通は噺家の話を聞きに行くというのだろうが、欽次は観に行くと言っていた。 「今度はいつごろになるかな」 「大根が終わってからにしようか」 「何言っているのかと思ったら夏芝居のことか」 「お前さんこそ何言っているのだい」 「寄席のことさ」 「噺家?」 「そうだ」 「噺家はいいね」 「いい商売だな」欽次は言った。 「うちらもいい商売だな」  八百屋のだんなは機嫌よく話した。 「うちの女房を殺めたのはやくざが絡んでいるというのは本当なのかい」欽次は言ったがそれには八百屋は答えないで「今度花火というものをするらしいぞ」と言いはじめた。 「それくらいは知っていらあ」 「知っていたのか」 「くわしくないけどな」 「今度見に行こう」 「いいね」欽次は花火を見に行く約束をした。  翌日は嵐で風が吹いていた。雨がひどかったのだが、こんなことを考えていていいのか彼は悩んだ。 「勘違いかな」と彼はつぶやいた。下手人は本物ではないといううわさが伝わってきた。 「どうも変だ」欽次はおかしい話だなと思った。あまり動かない方がいいかなと彼は考えたのだ。
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