漬物屋の女房

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 江戸の町で代々続く漬物屋浦田屋。その店主の欽次は商売が繁盛して皆で仲よくやって、女房と仲よくやっていた。  それなのに悪夢のようなできごとは起きた女房のおこそが殺められたのだった。はじめのうちは信じられなかった。でも本当の話だった。彼は悩んでいたのであった。「おこそがいなくなるなんて」彼はその犯人は捕まってほしいと思った。憮然とした顔をしているのだろうか、それとも怒り顔だろうか、と彼の顔を想像してみたりした。そんなことをして気を紛らわそうとしたが逆効果だった。  彼はいらいらしてきた、と思うと落ち込んでいた。  科人だけど人らしきものは見つかって捕らえられた。欽次は科人をゆるせなかった。絶対にゆるせない、と決めていた。でもその思いはどうなのだろうかと彼は考えた。  気の病ではないのかと彼は気が付いた。 「ゆるしてもゆるさなくてもおこそは帰ってこないのだ」と彼は下手人のことを考えるのをやめた。  そういうことはだいたいは妄想なのだ。
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