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手紙
「フィオラ・バッチア
私はおまえをゆるさない。
本当の婚約者は私だったのに。おまえは奪った。
ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。
いますぐ別れろ。
さもなければ、おまえや家族に危害が及ぶだろう。
呪いをこめて、ミリア・カレロ」
「旦那様。どうしましょう。あたし、怖いわ」
「大丈夫さ。バッチア家の目が光っているかぎり、悪さはできないさ」
送りつけられた手紙に震えるあたしを、旦那様は抱きしめてくれた。
あたしは安心して、もっとぬくもりを求めて、手を彼の背へと伸ばす。
するりと彼はあたしから離れて、手紙をつかんだ。
「それに、この悪女の証拠を世間に知らしめせば、この街であいつは生きていけないさ」
僕はゆるさない、と悪女討伐に燃える旦那様に、あたしはうっとりとした。あたしのためにこんなにも張りきってくれるなんて、と。
「さすがですわ、旦那様。……にしても、悪魔みたいな汚い字で、視界にはいるだけで怖いわ」
もっともっと愛情がほしくて、旦那様によりそった。
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