罪悪感という自意識

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罪悪感という自意識

度々思い出す 自分が傷付けた人達のことを 友人との別れの前に電話をかけることすらできなかったこと 好きな人が一生懸命涙を堪えていることに気付かずおどけてしまったこと 好意を寄せてくれる人に周囲への気恥ずかしさから邪険にしてしまったこと きっと傷付けてしまった 相手の思いを確認することすらできていないけれど 自分の中で構築された罪悪感は一方的にずっと自分を苦しめる どこまでも追いかけてくる月のように 罪悪感は自分の力など及ばないところでずっと自分を監視している 思い出そうとするとキリがない 後悔はずっと胸の中で根を張り心に食い込み養分を吸収し続けているから心が健康であることはない 全ての初対面の人に「すみません」の挨拶から始まることを恥じた方がいいのだと思う 初対面の人を傷付けたわけではないのだしそれで過去に傷付けた人が浮かばれるわけではない 初対面の人までいきなり傷付けてしまうだけなのかもしれない 動物園で見た動物たちを 水族館で見た魚たちを思い出しながら食事をする 生きるということは他の命を奪うことだ 生物は他者の生命を摂取することでしか生きていけない だけどその生命に対して申し訳ないと思ったことはない 食べることは当たり前の行為だから 明日になればまたどんな美味しいものを食べようかと考えている 飼い犬に派手な服を着せてウィンドウショッピングでもしている方がよほど罪深く感じる 死んだ魚が水槽の中で沈み白く変色していた その魚と目が合った時に吐き気を覚えたことがある そこで死ぬくらいならせめて食べてあげた方が優しいのかもしれない 貸したCDを返さなかったあいつはいま俺に対して何か感情を抱えているのだろうか 大人になったいま後悔をしているのだろうか 光の輪郭を目でなぞる 光は過去も現在も未来もこちらの意思とは関係なく降り注いでいる 嫌になる 自分の意思くらいはコントロールできないものか
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