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店と店の隙間を埋めるために造られたような、こぢんまりとした画廊だった。
白黄色の壁の右側には白い扉がはめ込まれており、左側には控えめにライトアップされたショーウインドウ。その百五十センチ四方程の空間に飾られている一枚の絵に、サムエルは目を奪われた。
土壁色に塗られたキャンバスに、彫刻刀で彫り込んだような質感の線で、人のような形の絵が描かれていた。ずいぶんと古いものに見えるその絵は、立派な装飾の施された金色の額縁に収められている。
サムエルはしばらく茫然とその絵を見つめていたが、ふと我に返って急いで画廊のドアを押し開けた。
「いらっしゃいませ」
彼の入店を見越していたかのように、口ひげを生やした画商が待ち受けていた。
「すみません、あの絵は、売り物ですか?」
指差された絵の裏側にチラリと目をやり、画商はにっこりと笑った。
「ええ、もちろんですよ。お気に召されましたか?」
「あれはどういった絵なのですか?」
サムエルは何を焦っているのか、急かすように画商に問う。
「それほど興味がおありで? お若いのにお目が高いですね。いいでしょう、お話ししましょう」
画商はショーウインドウからその絵を下ろし、室内のイーゼルに置き直した。ハロゲンライトを当て、絵がよく見えるように、正面に椅子をおいてサムエルを座らせる。
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