一枚の絵画

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一枚の絵画

 北欧の日暮れは、秋が深まるにつれぐんぐん早まっていく。  少し前まで夕方五時はまだ明るかったはずが、今日はすっかり闇に包まれていた。  最近になって着込み始めたダウンジャケットが、仕事帰りにバーで軽く一杯やってきた体には暑く感じられたのだろう。路地裏を家へと急ぐサムエルは、胸元のファスナーを下げて冷気を体に取り込んだ。  いつも(とお)っている、馴染みのある道だ。石畳の狭い通り沿いに並ぶ店の一つ一つになど、普段からいちいち目もくれていない。利用する店はもう決まりきっていて、それだけで生活は事足りている。  サムエルは耳にイヤホンを差し、お気に入りのプレイリストを流し込みながら、冷たい空気の中をいつもどおり習慣に任せて歩くのみ。  ……のはずが、その時向かい風が強く吹いた。  思わず立ち止まって顔を背けた彼は、ぎゅっと瞑った目を開けた瞬間、その画廊の存在に気づくこととなった。
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