勘違いはステキなはじまり

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『今のところ、行くつもりだよ』  缶チューハイを飲みながらテレビを見ていると、五分足らずで茉莉からの返事が返ってきた。  そうなんだ、じゃあ行こうかな……  でも、晴人(はると)も来るのかな……  そう思うと、もうずいぶん経つのにまだ心がざわついてしまう。  晴人との出会いは高校三年生の時だった。茉莉と晴人の親友(じゅん)も同じクラスで、卒業するまで一緒に過ごしていた。  茉莉は他校に幼馴染の彼がいて、恋愛に関しては先輩的存在。  気になる晴人の相談をしているうちに、うまく四人グループで行動するようにしてくれたのだ。  卒業間際のバレンタインでやっとの思いで晴人にチョコレートを渡すことができたけれど、 “好きです”とか “付き合ってください”なんてことは言えなくて「これ、あげる!」と言うのが精いっぱいだった。  茉莉は気を利かせてくれて、それからはよく晴人と二人で最寄り駅まで帰るようになった。  だけど卒業式の日を最後に、グループで連絡を取ることも集まることもなくなり、みんなそれぞれの大学へ進んでいった。でも、茉莉とはたまに連絡を取っていた。  晴人にとって私は、ただ仲のいい友達グループでしかなかったのかな。  あの時もっときちんと気持ちを伝えていればなにか変わったのかな。  もう十年も経つというのに、学生時代のあのなんともいえない曖昧な関係と、自分の勇気のなさに今更ながらため息が出る。
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