勘違いはステキなはじまり

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『晴人、帰国してるよ。まだ忘れられない?』  そうなんだ、もう帰ってきているんだ。  五年前のあの時、見送った背中を眺めていると、知らないうちに涙が頬をつたっていたっけ……。  勇気を出して声をかけると、笑顔で答えてくれた晴人。 今までつっかえていた気持ちがすーっととれたように思えた。  もっともっと早く声をかけることができていたら、また四人で集まれたのかな。  そんなことを今更思っても仕方ないのはわかっているけど、そのころのことを思い返す。  大学に入ってから彼女ができたらしいと茉莉から聞いていたし、そこであえてどうこうすることもないよねと、これは単に私自身のこじらせた片思いだったんだなと思うようにしていた。  私は大学のアウトドアサークルに入り、そこで仲良くなった先輩に告白されて、とりあえずお試しでもいいからと押され付き合うことになった。  けれど、言いたいことが言えない自分と、はっきりなんでも言ってくる先輩。  言われるがまま一緒にいるだけで、なかなか本音が言えない私とうまく続くわけがない。 「冴彩ちゃん、俺のことどう思ってる?」  半年ほど経った頃、そう言われて初めてこの関係がお互いに無理があると感じていることに気がついた。 「冴彩ちゃん、別れよう。冴彩ちゃんが心を許してなんでも話せる人じゃないとだめだよ」  先輩の言葉は心に響き、今でも覚えている。
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