勘違いはステキなはじまり

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『ううん、今はいい思い出かな。そう思うようにしたんだ。元カレにね、ちゃんと心許して話せる人じゃないとだめだよって言われちゃった』  ほんとそう。自分でもそう思う。 『いい人だね。でもそうだよ、なんでもちゃんと伝えなきゃ伝わらないよ』 『うん。これからはちゃんと伝えるようにしなきゃと思ってる』  今思えば、先輩はなにも自分のことを言わない私に、最後の最後まで気づかってくれていたんだ。  今は仕事が忙しくて、彼がほしい、合コンへ行きたいと思える余裕もなく、家と会社の往復の日々を送っている。 『今、そういう人いるの?』 『いないよー。仕事忙しくてなかなか出会いもないし。そっちはどう?』  缶チューハイをゴクゴク飲みながら、最近、茉莉はどうしてるのかな?と聞いてみた。 『今ひとりなんだ。想っている人はいるけど』  えっ?別れたの!?  うそ!ほんとに?  茉莉と最後に会ったのは一年前。  その時は、高校から付き合っていた彼とそろそろ結婚の話も出ていると聞いていたのに、わかんないものだなぁとなんだかしみじみしてしまう。  今度会った時に、ゆっくり聞いてみよう。  でも、あれ?今、好きな人はいるんだ? 『告白しないの?思ってることは言わないとね』  自分はできもしないのに、人のことだとすらすら言ってる自分がおかしすぎる。  ちょっと飲み過ぎたらしい……。  いつもは一本だけなのに、今夜は既に二本目がもう空になりそうだ。
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