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俺の隣でキラッキラに目を輝かせている佐野君こと佐野大輔は、俺が心を寄せる友達だ。心を寄せるというのも恋愛感情の方なのだが、佐野君から好意をもってもらう為にも、全く興味はないが“聖地巡礼“という目的でこの場所に一緒に来ている。
正直、俺の目にはごく普通の坂道にしか見えないのだが、佐野君にはここが夢の国のように写っているようで、なんともその表情が可愛くて、俺は横目でこそっと佐野君を見つめる。
「うわ〜!ずっと来たかったんだよね!夢みたい〜!」
佐野君には本当に夢のように写ってたみたいだ。
「良かったな。来れて。」
「うん!黒田君も、今日付き合ってくれてありがとね!」
「俺は全然いいよ。暇だったし。」
本当は佐野君と少しでも一緒に居たくて。小走りに坂道に向かう佐野君の背中を見つめながら、心の中で吐露してみる。
「黒田くーん!この位置に来てもらえる?」
佐野君が緩やかな坂道の上でブンブン手を振りながら俺を呼ぶ。さほど距離はないのだけれど、一生懸命ブンブン手を振っている佐野君がなんだか可愛くて思わず頬が緩む。俺は佐野君がいる場所へ小走りに向かう。
「ここで良かった?」
「うん!ここに居てね」
そう言った後に両手を後ろに組み、俺から少し距離を取った位置まで歩く。ゆっくり一歩ずつ噛み締めるように歩いているようで、きっとアニメの名シーンを思い出して幸せに浸っているんだと思う。そんな後ろ姿をじっと見つめていたら、佐野君が振り返って話し出す。
「ここね!カノちゃんが!...あっその、カノちゃんって言う、この場所がアニメになった作品の主役の女の子なんだけど、そのカノちゃんがずっと好きだった男の子に、今まで言えなかった恋心をね!思い切って告白するシーンなんだけど!その時の映像の描写がまた綺麗でね____ 」
話し出すというより弾丸トークだ。
佐野君の口から放たれる情報量に、俺の脳みそは若干追いていかれているが、とりあえずここがそのアニメの告白シーンの聖地という事だけは認識できた。
佐野君が身振り手振りで一生懸命アニメの良さを伝えようとしてくれてる。その姿がなんとも可愛くて。
溶けるように笑う佐野君の顔は、まるで好きな子の話をしているかのようになんだか甘くて。
ふつふつと湧き上がる抱きしめたい衝動をなんとか抑えて俺は黙々と佐野君の話しを聞く。
「それでね!ここで二人が結ばれたから、実際にこの場所で好きな人と両思いになってキスをすると、ずっと一緒に居られるって言われてるんだ〜!」
佐野君とバチッと目が合う。少しフリーズした佐野君は心なしかちょっと頬が赤い気がする。何故か照れたようにふいっと目をそらされる。
...これって、もしかしてって思っていいの...?
俺はなだらかな坂道に逆らって、佐野君にゆっくり近づく。
佐野君の上に影ができるほど側まで近づくと、少し驚いているような表情で俺の方に顔を向けた。
「____っ!」
俺は、そっと佐野君にキスをする。
佐野君は目を見開いた状態のまま固まっている。見る見るうちに頬と今度は耳までも赤く染まっていく。
「…佐野君?」
俺がそっと問いかけると、
____ドンッ
佐野君は急に俺の胸を押し出した。顔が俯いていてどういう表情をしているのかわからない。その時、耳を疑うような言葉が飛び込んできた。
「初めてのキス、、は、好きな人としたかったのに、、」
佐野君はそう言うと、俺に向けてビッと指差した手をブンブンと振りながら、
「ゆ、ゆ、、ゆるさないからあーーーーー!!」
「あっちょっ……………………え…??」
佐野君は坂道を駆け上がるように走り去っていった。
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今日は念願だったアニメの聖地のこの坂道に来れて嬉しい!ひとりで来ようかと思ってたけど、学校でいつも通り黒田君にアニメの良さを語り尽くしていた流れで、聖地巡礼に付き合ってくれることになった。
黒田君は優しい。前に思わずアニメの話ばっかりしてしまった時に申し訳なくて、つまらない話ばかりしてごめんねって謝ったら、
『なんで?好きなこと話せたら嬉しいじゃん?なんで謝るの?』
って言ってくれて。それ以来、黒田君には好きなアニメの話を語るようになった。いつかは黒田君にもアニメを好きになってくれると嬉しいなと思って最近はむしろ波及しているぐらい。
この名所を目の前にして心が躍る。僕が移動した場所に黒田君を呼んで、ここに立ってもらった後、僕は頭の中に浮かんだアニメの名シーンと照らし合わせるように、ゆっくりとこの坂道を登る。黒田君にこの良さを伝えたい!という衝動で振り返って話し始めたら話が止まらなくなってた。
「それでね!ここで二人が結ばれたから、実際にこの場所で好きな人と両思いになってキスをすると、ずっと一緒に居られるって言われてるんだ〜!」
ふと、黒田君とバチッと目が合った。
僕は思わずドキッとしてしまった。いつもは優しい表情で聞いてくれる黒田君が、何故か真剣な表情で僕を見てたから。
それでなくても黒田君は顔が整っていて、俗に言うイケメンだから無駄にドキッとしてしまって、気づけば側まで黒田君が来ていて、キスされた。
最初は何が起きたかわからなくて、黒田君の僕を呼ぶ声を聞いたら、思わず黒田君の胸を押して、僕はあんなことを言い放って走り出していた。
だって、夢だったんだもん…
ファースキスは初めての人と…
だけど…
どうしてこんなにドキドキしてるんだろう…?
僕は急に走ったせいだろうと、思うことにした。
____こんな二人が結ばれるのはもう少し先の話。
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