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桜の木の下で二人並んでやけに緊張した写真を撮ってから一ヶ月。
やっと制服にも新しい中学校生活にも慣れたのに……
「は?」
樹はそれまでの笑顔がまだ消えきらないまま戸惑いの声を出した。
肩にあるリュックが一気に重みを増した気がする。
「だからぁ、俺、サッカー部入らねぇ」
壮馬は樹を見て、そして、廊下の端に目をやった。
体験入部をいくつか済ませ、仮入部の登録を行う前日になって言い出した壮馬。
「はぁ!?一緒に勝つって約束しただろっ!」
樹が壮馬の大きめのブレザーを掴むと、壮馬は目を合わせないままキュッと唇を噛む。
「あのさぁ、今まで一緒にやってきたんだからわかるだろ?向いてねぇんだよ!俺は!」
それは今まで堪えてきたものを吐き出すようでもあった。
「何言ってんだよ!」
樹は怒ったらいいのか、悲しんだらいいのかよくわからない。
ただ、ショックだった。
「お前だって言ってただろ!ヘタだって!」
「だから練習して……」
「俺はお前じゃねぇんだよ!クラブチームなんて入ってねぇし、お前がイメージするようなプレーなんてできねぇの!」
ガンッと思いっきり殴られたような衝撃。
「はぁ?…………で?お前は何部にする気だよ?」
スルリと手を離して、出てきた声は樹自身でもびっくりするほど感情がなかった。
「……バスケ」
ただ俯いて壮馬は自分のスラックスを掴む。
「意味わかんね」
「いいよ。わかんなくて……」
それだけ言って壮馬は歩いて行ってしまった。
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