【電子書籍】勇者様の荷物持ち(番外編:邪神様の荷物持ち)【サンプル】

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 ふと、左端の数冊が他の本より前に出ていることに気づいた。本の高さは同じなのに、と不思議に思いながら本を奥へ押すと、くしゃ、と微かにビニールがこすれる音がした。慶介は手前の本を一度出し、奥に隠れていた物を取り出した。  それは紺色のビニール袋と赤いリボンでラッピングされていた。中は見えない。薄く埃をかぶってざらざらしたそれを撫でる。浮き上がった形から察するにどうやら本であることは間違いないようだ。  そのいかにもプレゼントといった風のそれに胸が嫌な感じでざわついた。一体誰にもらったプレゼントだろう。ほぼ皆無と言っていい草司の交友関係を考えると友達からもらったとは考えにくい。親にもらったと考えるのが妥当な気がするが、しかし隠すようにこんなところへ仕舞う理由が分からない。  もしかして、もらったのではなく、誰かにあげようとしたものではないのか……?   その可能性が脳裏に過ぎった瞬間、心の奥底で怒りに似た感情が炎を上げた。  まただ。また、自分の知らないところで、自分に向けない感情を誰かに向けようとしているのだと思うと、飼い犬に手を噛まれたような、屈辱的な苛立ちに胸がよじれた。  後ろを振り向いて草司を確認する。こちらに気づくことなくせっせと勉強に励んでいた。慶介に迷いはなかった。袋を破いて中の物を取り出した。  しかし出てきた物は、人への、特に女の子へのプレゼントとはおよそ考えられないものだった。  本の表紙には丈の短いセーラー服を着た少女が、股を大きく開いて悩ましげな視線をこちらに向けていた。表紙には『素人』だとか『中出し』だとか卑猥な文字が並んでいる。中をパラパラと捲ると、表紙の少女が下着姿になって劣情を煽るためだけに考えられたようなポーズをとっていた。  なんだただのエロ本か。過激な写真を目の前にしながら、慶介はほっと息を吐いた。それにしても、草司がこういうのが好みだとは知らなかった。というより、幼馴染みなのに、いや、だからなのか、こういった話をしたことがなかった。
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