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ベッドから離れて部屋の中央付近にある白い丸テーブルに座ると、目の前に出てきたのは予想以上におにぎりそのものだった。海苔はないみたいで見た目は塩おにぎりだ。恐る恐る1口食べるとお米独特のほのかな甘みが口に広がる。そして中の具材が見えてきて釣られる様にもう1口。もぐもぐと咀嚼すること数回、これは鮭おにぎりらしい。いい塩加減で魚の味が引き立っていてとても美味しい。
自分ではそんなにお腹は空いていないつもりだったが1度食べ物を口にしたら結構お腹が空いていたっぽい。ちらりと向かい側に立っている優男の様子を伺うと、がつがつと食べ始めた俺を眺めほっとした表情を浮かべている。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「お口にあったようでなによりでございます。甘いものもございますがどうなさいますか?ただその、この国のものになってしまいますが…。」
一瞬まだ口寂しいと思っていたのがバレたかと思ったがそうでは無いようで、先程の別世界とかへの反応を気にしてか少し気まずそうにしながら聞いてくれている。
違う世界の物を食べるのは気が引けるが、
数日していなかったのを、先程彼らに伝えようとした事と共に思い出して少し体が熱っぽく疼く。
こういう時は甘い物でいつも誤魔化すか、すぐに仕事を入れて過ごしてきたので、習慣になっている事を思うと食べた方が自分の為だろう。
ただ何がいいかと聞かれてもそもそもどういったものがあるのか知らない。
考える事数分、そう言えば一つだけだか元の世界でも好きだったものに似た物を出された事を思い出した。
「えっ…と。あれが食べたいです。その、」
「あれ…。ああ、フィナンの事でしょうか?前にお出しした事があるのはそれくらいなのですが。」
「多分それです!」
「かしこまりました。すぐご用意して参ります。」
優男はすぐ思い当たったのか、すぐに菓子の名前を上げて教えてくれた。いまいちピンとは来なかったがそんな名前だった気がするし、なにより先程から俺の事をいちはやく予測して動いてくれる優男の事だからたぶん大丈夫だろう。
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