85人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の返事を聞くとすぐに用意してくれるらしく、優男が部屋を後にする。数分後、微かに甘い香りを漂わせながら彼がまたもや配膳用のカートを押して戻ってきた。
手足の長い優男だが、この世界の人の基準なのか若干俺からするとカートも背が高い気がする。
「どうぞ。飲み物は前にお出ししたものと同じものをご用意致しました。」
「ありがとうございます。あ、おいしい…。」
「まだ焼いている分がありますので遠慮なくお申し付けください。」
「何から何までありがとうございます。」
まだ他にも焼いてくれているらしい。優男はもしかしなくてもすごく出来る男っぽい。こんな男が俺にずっとついてていいのだろうか。
それに名前を知らないのも不便だ。直接呼んではないが、ずっと優男と言う訳にはいかないし。
「あの、ずっと俺についてていいんですか?」
「はい、それはもちろん。詳しくはもう少し状況が落ち着いた後殿下からお話があると思いますが、私は元々貴方様付きの者ですのでお気になさらないで下さい。」
「俺付き?その、執事って事ですか?」
「現状ではそうなっています。ですがユウヤ様が他の者が良ければその者へ変わる事も可能ですので深くはお考えにならなくても大丈夫かと思います。」
「そんな別の人が良いなんて。あの、じゃあ名前、名前教えて貰えますか?」
そう言って俺が名前を聞くと、優男はそのエメラルド色の瞳を驚きからか落ちそうなほど丸くしていた。
「失礼致しました。名も名乗らず貴方様の傍に居ようなどど。名前も知らぬ者がこのように近付いては更に貴方様の負担になった事でしょう。申し訳ございません。」
「いえ、俺が気絶したからそんな暇も無かったですし。頭を上げて下さい。」
すぐに表情を戻した優男はサッと頭を下げて謝っている。しかし動揺していたのは俺も優男も同じだし、勝手に召喚されて驚きと恐怖から喚き散らかして気絶したのは俺。
それは正直言ってあの説明は雑過ぎたとは思う。そりゃ俺だってただの一般人だったんだし。
最初のコメントを投稿しよう!